ランニングシューズのかかとの外側が、極端にすり減るランナーはオーバープロネーション(過回内)を疑ってみる必要があります。
日本人ランナーの7割はオーバープロネーション(過回内)と言われていますが、ランナーにとってかなりのハンディキャップですし、様々な足トラブルの原因になることもあります。
しかし、オーバープロネーション(過回内)はその原因と、メカニズムを正しく理解すれば改善することができます。
かかとの外側がすり減るのはオーバープロネーションが原因
プロネーションとは日本語で回内と言い、足の動きだけではなく、腕などの場合も含めて、身体の内側に回り込む動きのことを言います。
正常な足の動きをしている人でも、足の裏にかかる衝撃を和らげるために、ある程度のプロネーション(回内)を行っていますが
これが過剰になることを過回内:オーバープロネーションと言います。
オーバープロネーションの人の左足を真後ろから見た場合
上図のように
足底の外側から着地して、足底が内側に回転(回内)しながら最後には足の内側が最後に地面を離れるように見えます。
図は左足を見た場面
外側から着地して身体の中心方向に回内しています。
この時、真横から足の底の動きを見れば、当然、かかとの部分が地面につき、次第に足底全体が地面に接触し、最後は足先の方から地面から離れるような動きをします。
つまり、オーバープロネーションの人はかかとの外側から着地して親指の付け根付近から地面から足が離れるように動くことになります。
ですから、ランニングシューズの減り方としては、かかとの外側と親指の付け根付近がすり減りやすいということになります。
コラム
オーバープロネーション(過回内)になると、どうしても足首が内側に倒れ込むような動きをすることから、足首が内側に折れ曲がったような形になりやすくなります。
このような形をした足を「回内足」と言い、後ろから見ると足首がX字のように見えます。
このことから誤解して、オーバープロネーションの人はかかとの内側がすり減るとかX脚になりやすいと説明しているサイトが時たまありますが、これは間違いです。
これまで説明したとおりオーバープロネーションになると、かかとの外側が減りやすい傾向があり
詳しくは後から説明しますが、日本人の場合X脚ではなく、O脚や、ガニ股になりやすい傾向があります。
ガニ股とオーバープロネーションの意外な関係とガニ股を改善する方法
オーバープロネーションになる本当の原因は
オーバープロネーションになるのには様々な要因が重なっていると考えられますが
1番の大きな原因は、足底や足首などの筋肉や骨格が正常に発達しておらず、強い負荷に耐えられないということです。
正常な歩き方(走り方)をすると、かかとの真後ろから着地して、指先の方に重心が抜けていきます。
回内足の人はかかとの外側から着地して足底が内側に回転するように重心が移動します。
イメージが沸きにくい場合は、正常な歩き方を意識して、実際にゆっくり歩きながら足底や足首などにかかる負荷を感じてみて下さい。
足首をしっかり後ろに押し出すようにしながら、指の付け根で蹴り上げるようにして歩きます。
次に、オーバープロネーションしている歩き方を理解するために
足先を、ハの字に開いて、足先の角度を変えないでそのままゆっくり歩いてみましょう
この場合、かかとの外側から着地して、親指の内側に重心が抜けるような歩き方になると思いますが
足底や足首にかかる力は、正常な歩き方に比べてずいぶんと軽くなったと感じるのではないでしょうか。
あ、この時、無理矢理足底を踏ん張って歩かないでくださいね(^^;)
要は、足先を開いてハの字のまま歩くと、親指の内側の方に重心が抜けていくので足首や足底に力を加えなくても歩行が可能になるということです。
オーバープロネーションというのは原理的にはこのような歩き方(走り方)をしています。
例えばマラソンなどで最初は正常な足の動きをしていても、疲労がたまってくると、なるべく省エネで走ろうとします。
(特に足底や足首の筋肉や骨格が相対的に弱い人)
そうなると自然に、足を回内させるような動きで、足底や足首にかかる負担を少なくしようとしてオーバープロネーションになってしまうということになります。
そしてプロネーション(回内)させればさせるほど、足底や足首への瞬間的な負担が少なくなるので、次第にオーバープロネーションした足の動きが普通になってきます。
一般的なオーバープロネーションと足底トラブルの因果関係の説明では
内側に倒れる回内運動による負荷で縦アーチがつぶれる(扁平足になる)
↓
横アーチがつぶれる
↓
開張足になる
↓
外反母趾、内反小趾などのトラブル
というような説明をされている場合が多いようですが
これは順番が逆だと思います。
注:開張足
足底の横アーチがつぶれて、足底が横に広がってしまった状態
メカニズムとしては
運動不足や、足の過保護(衝撃を吸収する靴のクッション、室内でのスリッパ履きなど)によって足底や足首の筋肉や骨格が衰える
↓
オーバープロネーションになる
↓
足底や足首にかかる負荷が少なくなる
↓
足底や足首周辺の筋肉や骨格がますます衰える
↓
足底の縦アーチ、横アーチがつぶれる
(筋肉などが弱くなってアーチを支えきれなくなる)
↓
開張足になる
↓
外反母趾、内反小趾などの足トラブル
野生の動物は足がダメになる=死
を意味すると言われています。
現代人は歩いたり走ったりすることが少なくなってきていると言われますが、足を怪我したりした時のことを考えれば、いかに人間にとって足が大切か分かると思います。
歩いたり走ったりする時には体重の何倍もの負荷が足にかかります。さらに、それに1日に歩いたり走ったりする時の歩数を掛け合わせればとんでもない数字
何百トンとかいう数字が出てくるはずで
それだけの負荷が足にかかっていて
しかも、足はそれだけの負荷に耐えられるように出来ています。
ところが、逆に、足にかかる負荷が少なくなると、とたんに足は退化していき
扁平足や開張足(外反母趾、内反小趾)あるいは巻き爪などという足トラブルに巻き込まれることになります。
つまりオーバープロネーションによって、弱った足底や足首の筋肉、骨格にかかる負荷を減らしているのは良いのですが
そのことでますます足の他の部分に比べてこれらの部分が相対的に弱くなってくる
↓
オーバープロネーションが強くなる
という悪循環に陥ってしまうわけです。
そしてそれが更に足の様々なトラブルの原因になっていきます。
ランニングで膝関節を痛めやすいのはオーバープロネーションが原因?
ここでは詳しくは説明しませんが
オーバープロネーション
↓
(足先が)ハの字走行になる。
足先を真っ直ぐ前方に向けたままオーバープロネーションすると、とても走りにくいです。
↓
股関節やひざ関節が開いた形での走行になりやすく
となるとガニ股やO脚になりやすいだけならまだしも
足底や足首を使わないと、連動するふくらはぎやひざ周辺の筋肉、太ももなどの筋肉もあまり使われず
相対的にひざや股関節を軸に足を動かすような走法になるだけでなく
関節の動く方向とはややズレた、斜め方向に力が加わることから
かかと、ひざ関節、股関節に負荷がかかり故障の原因にもなります。
この辺りの説明が分かりにくい人は、足首をねんざして、足を引きずって歩く時のことを思い出して下さい
周辺の筋肉に力を入れると痛みが走りますから、かかと、ひざ、股関節を軸にして、関節に体重をのせるように歩きますよね。
極端なオーバープロネーションで、足をハの字にして走ると上記のような状態に近くなります。
筋肉は鍛えれば強くなりますが、関節は使えば使うほどすり減って、トラブルを起こすことになります。
オーバープロネーションを改善する方法
これまでの説明を理解して頂ければ、オーバープロネーションを改善するためには
まずは弱っている足底や足首周辺の筋肉や骨格を鍛えれば良いことが分かると思います。
そこで足の裏や足首そのものを直接鍛える方法などがよくでてきます。
まあ、やって悪いことはないですが
足に毎日かかっている負荷を考えると焼け石に水ですし
そもそもオーバープロネーションは足の動かし方の癖でもありますから
一番簡単で効果があるのは
「正しい歩き方(走り方)をする」
ということになります。
左足の動き
毎日歩いたり走ったりする時に足にかかる負荷はトータルするとものすごい量になると前の方でも書きましたが
普段から足底や足首周辺に負荷がかかる歩き方や走り方をすることで、相当の運動量、負荷になります。
といっても長年慣れ親しんだ習慣、癖はそう簡単に治るものではありません
歩き始めや走り始めは気を付けていても、時間が経つうちに、もとの動かし方に戻っている場合が多いと思います。
そこでお勧めするのがオーバープロネーション対策が施してあるランニングシューズや、インソール(中敷き)を使用することです。
これらは、足底の内側が固く作られていて、足がプロネーション(回内)しにくくなっています。
プロネーション(回内)しにくくなっていますから、普通に歩いても正常な足の動きに近くなります。
またこれらのランニングシューズやインソールを使って走る時には、足先を真っ直ぐ前に向けて
足底や足首を使って真っ直ぐ後ろに蹴り出すこと
足の指先の方向に重心を移動させること
(親指の内側に重心を移動させない:回内させない)
ということを意識してトレーニングするようにします。
ただし、ここで注意するのは
いきなりオーバープロネーション用のシューズなどを使ってハードな練習をしたり、マラソン大会に出場したりすると
まず確実に足のどこかにトラブルが出てきます。
そもそも、足の筋肉や骨格が弱いことから、その部分に負荷がなるべくかからないような走り=オーバープロネーションになっているのに
急に負荷がかかるようになれば、弱い部分が悲鳴を上げるというか、限界を超えてしまうことになります。
ですから、最初のうちはランニングフォームを矯正するつもりでウォーミングアップや軽い練習の時だけに使うようにして足を慣らしていきましょう。
そして、足に違和感が無いのを確認しながら、少しずつハードな練習に使うようにしていきます。
オーバープロネーションしているということはそもそも足底や足首付近のバネが弱く、しかも充分そのバネを活用していないということですし
足が回内しているということは、力を横方向に逃がしているということですから長距離を走るマラソンなどを考えるとものすごいエネルギーロスをしていることにもなります。
ということで、これを改善するだけでも、相当な記録アップが期待できるかもしれません
まとめ
ランニングシューズのかかとの外側が減るのはオーバープロネーションが原因
オーバープロネーションは足底や足首付近の筋肉や骨格が弱くて正常な負荷に耐えられないのがそもそもの原因
そして、様々な足トラブルの原因にもなる。
オーバープロネーション対策が施してあるランニングシューズやインソールを使って、オーバープロネーションを改善すると、相当な記録アップが期待できるかもしれない
ただし、無理に負荷をかけると足を痛める原因になるので、少しづつ慣らしていく様にしましょう。
2019.1.10追記
読者の方から、下記のサイトと逆のことが書いてあるのではないかとご指摘がありました。
説明不足の点や、下記サイトの視点も交えて追記したいと思います。
ランニングシューズの減り方で「プロネーション」は判断できるのか?
本記事の内容まとめ
本記事で、オーバープロネーションの人のシューズの減り方の特徴として下記のように説明しています。
オーバープロネーションは走行中(あるいは歩行中)足底が外側から内側に回転するような動きをします。
また走行中、通常は踵から着地し、足先の方で蹴り出すように足底は動きます。
この動きを合成すると、踵の外側から着地し、足を蹴り出すときには足底の内側に体重をかけて蹴り出すことになります。
この結果、踵の部分は外側が減りやすく、シューズの前半分については内側が減りやすいとしています。
足底の重心の動き
オーバープロネーションする人は踵の外側と、シューズ前半部分の内側がすり減りやすい
提示されたサイトに置ける説明
質問された方の提示されたサイトにはスポーツシューズ各社に問い合わせた内容が記載されています。
ASICS
個人差があるので自分でプロネーションを判断するのは難しい。矯正用のシューズを履いている場合は、ソールが減らないように設計されているので「減り具合」だけで判断することはできない。
これに関しては当サイトでも、プロネーションの対策がしてあるシューズの場合、プロ-ネーションした走り方が出来ないため不具合が出る場合があるということを記述しています。
NIKE
オーバープロネーションは足の内側に重心がかかり、ソールの内側が減りやすい。アンダープロネーションはその逆でソールの外側が減りやすい
ADIDAS
環境(足場)や歩き方によって個人差があるため、自分でプロネーションを判断するのは難しい
NEW BALANCE
オーバープロネーションは土踏まずのアーチが低く、内側とカカト全体が減る傾向にある。日本人の70%がこれに該当。
各社オーバープロネーションの場合、シューズの底の内側が減りやすいとしていますが、踵(カカト)の部分の片減りについての記述はありません。
因みに提示サイトの筆者はアンダープロネーションとの事ですが
一般的に、日本人ランナーの70%はオーバープロネーション、30%がニュートラル、アンダープロネーションは極めて少ないとされています。
私の場合はガニ股(フーテンの)寅さん歩きですから、どうしても踵(カカト)の外側が片減りしやすくなっています。
そういうバイアスがかかっているかもしれませんが、足の動きを物理的に考えると、やはりオーバープロネーションする人は踵の外側とシューズ前方部は内側がすり減りやすいと考えています。
コメント
[…] […]
[…] プロネーションについては「ランニングシューズのかかとの外側がすり減るのはオーバープロネーションが原因、その改善方法は」という記事がとても参考になったんですが、実際、Asic […]
[…] 出典;ランニングシューズのかかとの外側がすり減るのはオーバープロネーションが原因、その改善方法は […]
オーバープロネーションだと、踵の内側で蹴り出し始めるので、踵の内側がすり減る
アンダープロネーションだと、踵の外側で蹴り出し始めるので、踵の外側がすり減る
真逆のことが書いてある記事があるのでどうぞ
https://tomo.run/checking-pronation-type
コメント有難うございます。
ご指摘のサイトについて、非常に参考になります。
一部当サイトと細部で異なる見解が書かれていますが、オーバープロネーションの場合、ソールの内側が減りやすいという点で基本的には同じ内容だと考えます。
もっとも、個人の走り方によって一概に判断出来ないという点については、まさしくその通りだと思います。
詳しくは本文下部の方で記述致します。
[…] ランニングシューズのかかとの外側がすり減るのはオーバープロネーションが原因、その改善方法は […]
オーバープロネーションでもサピネーションでも、O脚、もしくは、静止立脚時サピネーションで有れば踵の外側から着地する点は変わらないのでは無いでしょうか?
土踏まずのアーチ潰れがオーバープロネーションの原因であるなら、着地から蹴り出しが抜ける方向は外側から内側になるので、このサイトで記載されている通りの箇所が擦り減ると考えられます。また、サピネーションなら蹴り出しが抜ける方向は外側から外側になるので、踵の外側と前足部の外側(小指球近辺)が擦り減ると考えられます。
と、考えると、踵のすり減り位置はプロネーション、サピネーションとは関係無く、O脚X脚、又は、ガリ股内股が主要因になるのではないでしょうか?