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スラップ訴訟を企業が恫喝に使用し社会問題化しているが違法なのか

社会
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団体や企業などが比較的弱者である個人を、恫喝のために訴える(スラップ訴訟)ことが増えています。

個人にとって裁判は非常に負担が重く、このために、力のある団体や企業を批判しにくくなることがあり、ある意味での言論弾圧とも言える行為です。

このスラップ訴訟とは何か、日本では違法ではないのかという点について考えてみたいと思います。

 

裁判の様子

スラップ訴訟とは

そもそもスラップ訴訟とは何なのでしょう。

スラップとはstrategic lawsuit against public participation(頭文字を繋げるとSLAPP:平手打ち(英:slap)にも通じる表現)の略であり、恫喝訴訟、威圧訴訟などとも言われます。

社会的に力を持つ団体や企業が、その団体などへの批判や、活動への反対運動を起こしている社会的弱者(個人など)を相手に、批判や活動を封じ込めるために、勝訴を目的としないで起こす訴訟です。

 

どういう事かというと、お金持ちや、団体、大企業であれば、訴訟を起こすこと自体は容易です。

一方、訴えられたのが個人などであれば、様々な資源(裁判費用、裁判に対する知識やノウハウ、裁判に対応する時間、人)が少なく、訴えられただけで、大きなダメージとなります。

 

例え理不尽な訴えであると分かっていても、裁判を起こされれば対応せざるを得ず、一般の個人であれば多大な裁判費用、裁判に要する時間が重くのしかかってきますし

訴えを起こすぞと、威嚇されただけで、その企業などへの批判を主張しにくくなります。

 

欧米などでは、言論弾圧だとして社会問題化してきており、スラップ訴訟を禁じる法律を制定している国もあります。

 

日本では2000年ころから「名誉毀損」などを名目として、団体や企業が、批判する個人やジャーナリストなどを訴える訴訟が増えています。

しかし日本ではまだスラップ訴訟という言葉自体があまり知られていないのが現状です。


日本においてスラップ訴訟と主張している裁判例など

・文芸評論家・小川榮太郎の著書『徹底検証「森友・加計事件」』に対する朝日新聞による訴訟に対して同氏がスラップ訴訟と主張

・「NHKから国民を守る党(N国党)」の久保田学・立川市議会議員がジャーナリスト相手に起こした訴訟(スラップ訴訟であると認定されジャーナリスト側が勝訴)

・元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏からSNSでの発言を名誉毀損で訴えられたジャーナリストがスラップ訴訟と主張

 

スラップ訴訟で被害を受けている個人

米国ではスラップ訴訟が違法化されている

米国で1960年代から80年代にかけ、環境問題や消費者問題などに関する市民運動が盛んになり、関連する企業を批判し、反対運動が活発に行われるようになります。

これに対して、企業の側は、市民や市民運動団体を相手取り、名誉毀損や業務妨害などを理由に、高額の損害賠償金を請求する民事訴訟を頻繁に提起するようになりました。

 

その後80年代後半には、スラップ訴訟が、憲法上保障される「表現の自由」を侵害するものとして社会問題と考えられるようになり、2013年までに、全米の半数を超える州で、スラップ訴訟による言論弾圧を防止するための法律が制定されています。

 

これらの「スラップ防止法Anti-SLAPP Law」」と呼ばれる法律では、企業などから訴えられた被告から「スラップである」と主張された訴訟について、裁判所がその主張を認めれば、訴訟を提起した原告側にスラップ訴訟ではないことの立証責任が課される事になります。

また、訴えた側がスラップでないと立証できなければ訴訟は打ち切られ、原告側に弁護士費用なども負担させられることになります。

大企業にスラップ訴訟されて困っている一市民

日本のスラップ訴訟への状況

日本でも最近はスラップ訴訟として違法と判断される判例も出てきていますが、いずれも裁判を戦った結果のものであり

団体や企業側としては不都合な真実や、主張を封じ込めるためにスラップ訴訟を行うことは、まだまだ多いのが現状です。

 

訴えられた側は、多大な資源(費用、時間)を失うばかりでなく、

普通の一般市民であれば、生涯の内で裁判に関わることなどほとんどない人が多いと思いますが

訴えられたという、精神的苦痛、長期間の時間的拘束、仕事への影響、万が一の敗訴への恐怖などを考えると

該当する団体企業への批判的言動は、どうしても萎縮せざるを得ず、スラップ訴訟を起こした側(団体、企業など)は、例え敗訴しても、批判を押さえ込むという目的は達成され

また、批判した個人などへの制裁という意味合いでも目的を達成したことになります。

 

まだまだ、日本ではスラップ訴訟の違法性への意識は低く、企業などが安易に訴訟に持ち込もうとする風潮もあります。

スラップ訴訟は違法であるばかりでなく、反社会的な行為であるという意識を多くの人が持ち

そのような訴訟を行った団体や企業が、批判され、社会的制裁を受けるような状況にしていく必要があるのではないかと思います。

 

そしてさらにはスラップ訴訟を法律で明確に違法化し、個人を保護する法律の立法も求められます。

 

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