シンギュラリティー(特異点:AIの能力が人間の能力を超える日)が来る以前に、AIの発達によって、人間のやっている仕事の多くがAIに取って代わられ、次第に人間のやる仕事がなくなることが予想されています。
多くの人が仕事を失い、収入の道を断たれる結果、国民の全員に最低限の生活が出来るだけの現金を定期的に配るBI:ベーシックインカム制度の導入が不可欠であると考えられるという検討を前回しました。
AIの発達により、人は仕事を失い、ベーシックインカムが必要になる
しかし、BI:ベーシックインカム制度を導入するに当たって、問題は財源です。
仮に、国民全員に一人に毎月8万円を支給するとして、日本の全人口1.265億人×12ヶ月×8万円=約120兆円の財源をどうするか
現在の日本政府の借金は1100兆円以上あり、GDPの2倍もあり既に危険水域にあると主張する人も多くいます。
日本の毎年の国家予算は約100兆円、しかもそのうちの約1/3は新規国債、つまり借金でまかなわれており、毎年、日本政府の借金が膨れあがっている状況で、BI:ベーシックインカムのために更に120兆円もの膨大なお金を支出できるのでしょうか。
一見実現不可能な絵空事、夢物語のような気もしますが
そうはいってもAIの発達による大量失業時代はそこまで迫ってきていて、何としてでもBI:ベーシックインカム制度は実現せざるを得ない状況に追い込まれます。
ベーシックインカムは実現不可能で、我々日本人は座して地獄のような世の中がくるのを待つのか
それともBI:ベーッシクインカムを実現するための妙案はあるのでしょうか
社会保障費をベーシックインカムの財源として使う
山崎元氏(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員)の試算に因れば、年金、生活保護、雇用保険、児童手当、各種控除をベーッシックインカムに当てれば、日本国民全員に毎月4.6万円の支給が可能になるとしています。
また経済学者の小沢修司氏も増税しなくても、各種税制を集約することで月額5万円程度のベーッシックインカムは可能だと試算しています。
実際に社会保障費をベーッシクインカムに移行するためには様々な不具合や既存システムの既得権益者からの抵抗があると考えられますが、財源的には5万円程度であれば、現在の税制のままでも5万円程度までは実現は不可能ではないでしょう。
これから逆算すれば残り1人3万円分
3万円×1.265億人×12ヶ月=45兆円分を確保出来れば、1人8万円のベーシックインカムが可能になります。
とは言っても45兆円は現在の国家予算の約半分、これだけの財源は捻出できるのでしょうか。
消費税でベーシックインカムの財源をまかなう場合
社会保障費をベーッシックインカムに置き換えても、最終的に45兆円ほど財源が不足します。
これを消費税でまかなうとした場合、消費税をいくらにすれば良いのでしょう
日本のGDPは総額で約500兆円、そのうち個人消費は約300兆円と言われています。
ですから消費税1%は約3兆円になるはずですが、消費税非課税事業者などがあるため、実際には2.3兆円程度になります。
ですから45兆円÷2.3兆円=19.56%
およそ消費税を20%程、今より上げれば何とかまかなえますが、そうなると消費税率は30%程度となります。
ヨーロッパの国の中には、消費税率が25%程度の国が結構ありますから、必ずしも無理な税率では無いかもしれません。
日本の経済成長を当てにする
日本の経済成長を当てにするというと何か虫の良すぎる主張のように聞こえるかも知れませんが
日本は21世紀に入ってから20年間にわたってほとんど経済成長していません。
例えば
2000年の日本のGDPは527兆ドル
2019年の日本のGDPは558億ドル
20年間でわずか5.9%しか伸びていない、年率にするとわずか0.3%でしかありません
日本は少子高齢化、低成長時代に入ったのでどうしようもないと主張する人もいるかもしれませんが、これはやはりどう見ても異常
日本以外の先進国を見ても、低成長とは言えそれなりに成長し20年間でGDPが1.5倍以上にはなっています。
ドル換算(為替の変動)のため変動はありますが、日本はバブル崩壊後全く成長していない一方、低成長と言ってもヨーロッパ諸国でもそれなりに成長しています。
もっと大胆に規制撤廃や、既得権益を廃して、成長戦略をとればもう少しましな結果になっていた可能性はありますし
過去は過去として、今後、何らかの対策を行うことで2%程度の経済成長を行うことは不可能ではないと思います。
今後年率2%の経済成長をしたとすると20年後のGDPは約800兆円になります。
このうち個人消費が60%として、消費税の対象になるのは480兆円
消費税1%あたり4.8兆円
非課税分などを除いて4兆円とすればベーシックインカムに不足している45兆円は消費税にして11%あまりになります。
つまり現行の10%+11%=21%
となれば消費税を21~22%程度にすれば間に合う勘定になります。
とすれば、現在のヨーロッパ諸国と比べれば決して高くない水準に落ち着きます。
もちろんこの試算は20年後の、希望的予測を元にしていますから、一気にベーッシクインカムを開始することは出来ませんし、経済成長するまでに時間がかかりますから
例えば毎年5,000円程度ずつ、給付額を積み上げて行き、20年後に8万円の給付を達成するといったやり方になるでしょう。
MMT(現代貨幣理論)による財源の捻出
MMT(現代貨幣理論)とは、一言で言うと、自国通貨で国債を発行している国は、インフレになるまで国債を発行することが可能だとする経済理論です。
日本の場合、自国通貨で国債を発行しており、外貨準備も膨大で、円が暴落する可能性も今のところほとんどない状況の中で、デフレに苦しんでいるのだから、さらに国債を発行してもいい
というよりは、もっと国債を発行して、市中にお金を流し込んで、経済を活性化させるべきというものです。
MMT(現代貨幣理論)については、多くの識者が懐疑的な意見を持っているようで、日本政府の政策に取り入れられる可能性は、当面は低いと考えられますが
MMT理論が可能であれば、他の政策と合わせて行うことで、ベーシックインカムに移行する際のインパクトはかなり抑えられることになります。
まとめ
現在の社会保障費ベーシックインカムに充当することで、1人あたり5万円程度の給付は可能であると考える人もいます。
仮にこれが可能であるとして、不足分の45兆円を調達するためには
消費税+経済発展に加え、もし可能であればMMTによる国債の増発により更に実施のハードルは下がります。
もちろん、ベーシックインカムを導入する事の是非すら合意がなされていない現状で
社会保障費をベーシックインカムに充当するとか、ベーシックインカムのために消費税を増税するなどということに対して国民的理解が得られるのかという問題もありますが
ここまで、AIやロボットの発達により、多くの人が職を失い、収入を断たれる未来が次第に明らかになってきている現実の前に
ベーシックインカム制度の導入は避けられない現実のようにも思えます。
また、ベーッシックインカム制度の導入に際してMMTによる国債の増発が可能であればより、制度の導入がスムーズに行くと考えられます。
そこで次回はMMT理論はどのようなものであるのか、そんなことが本当に可能であるのかなどについて考えてみたいと思います。
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