前回は人工知能の発達、シンギュラリティー後の世界はどうなるのかについて考えてみましたが
そのような未来SF小説のような世界以前に、AIが発達することによって、人間のやっている仕事の多くはAIに置き換えられていきます。
AIの発達によって、さらに今は存在しない別の職業が生まれてくる可能性を主張する人もいますが
常識的には、今の仕事がロボットやAIが出来るようになれば、多くの人は失業するのではないかと考えるのが自然です。
そうなるとどうなるのか、街中に失業者が溢れカオス状態になるのか
それともその前に、全国民に一律の生活費を支給するベーシックインカム制度が確立して、取り敢えず全ての人が最低限の生活が出来るようになるのでしょうか。
現時点でAIの偏差値は57
少し前ですが 官民共同のAIプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」という研究で、現時点でのAIの能力では、偏差値が57が限界で(東大の偏差値は68~72)
さらに偏差値を向上させるためには何らかのブレークスルーが必要ということで、このプロジェクトは終了しています。
AIが高得点を取れない大きな理由としてはAIは統計的な処理による文章の理解は出来るものの、文章自体は理解できないというものがありました。
一方、この研究の中で行われた現代の学生などにたいする調査では、「中学を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」という調査結果が出ています。
つまり、現代の若者の多くがAIと同じような文章理解しかできていないという現状が洗い出されています。
具体的に言うと
「大リーグの選手のうち40%が外国人で、外国人選手のうちプエルトリコ人は30%だとすると、大リーグの選手のうち何%がプエルトリコ人か」という設問に対して
多くの子供達が40%とか30%という回答を選択
(正解は40%のうちの30%だから12%となるはず)
つまり、文章の「○○のうち○○%が」という内容を理解出来ず、文中に出てきた、それらしい数字を選択したということで
(AIもデーターの中からもっともらしい数字をピックアップして回答をする)
人間ならではの論理的思考が出来ない(あるいは文章を理解出来ない)人が増えていると言えます。
この例は別としても、偏差値57とは、統計学上、上位24%に入るわけで
人間の76%(全体の3/4)はAIよりも頭が悪い
と言っちゃ何ですから
テストの成績は悪いということです。
もちろんAIに出来る事には各種の制限がありますし、様々な業務を複合的にやらせることは難しいでしょうから
いきなりAIに出来る事全てが人間からAIに取って代わられるわけではないでしょうが、人間のやっている仕事は確実にAIに少しずつ取って代わられるようになりますし
少なくとも、例えば今まで3日かかっていた仕事がAIを活用することで1日で出来るようになれば、必要な人員は1/3になりますから、会社や社会に必要な人の数は減っていくことになります。
仕事がないのにどうやって人は収入を得るのか(生活して行くのか)
普通に考えればAIやロボットの発達によって、人間が出来る仕事はどんどん減少していきます。
そうなると仕事の無くなった人はどうやって収入を得るのでしょう。
考えられるのは
・企業などに売上げなどに応じ、強制的に一定の人数を雇うことを強制する
・国内の一定のサービスや、商品を無料にして、収入がなくても、一定のレベルの生活が出来る社会を作る
・生活保護を充実させて、収入の無くなった人には生活保護を行う
・全国民に対して、最低限の生活出来るお金を支給する(BI:ベーシックインカム制度)
などがあるでしょう。
これらをもう少し詳しく検討してみます。
企業などに強制的に一定の数の従業員を雇用させる
企業に売上げなどに比例して強制的に人を雇用することを強制するものです。
とはいうものの、仕事のない人を形だけ雇用して何をさせるのか
事務所の掃除でもさせるのか
あるいは、出勤しなくても良いから給与だけ支払うのか
いずれにしろ、他の国も同じような制度を採用していたとしても日本人の給与水準は比較的に高いですから、無駄な賃金を支払っていて世界の企業と対等に競争が出来るのでしょうか
あるいは、企業は売上げを伸ばせば伸ばすほど、お荷物社員を抱え込むことになり生産性が低下します。
そうなると、多くの余剰人員を抱えた企業が諸外国の企業と競争して生き残っていくのは難しいような気がします。
それに、日本以外の国が、足並みを揃えて同じような制度を採用しているのでなければ、日本の企業だけに足かせをかけるのは現実的ではないでしょう。
生活に最低限必要なサービスや商品を無料にする
昔は、お米の配給制度などがありましたが
最低限の生活をするだけなら、お金を使わずに生活出来るようにするという方法も考えられます。
例えば
・お米や食料品を、一定額まで無料で購入出来るようにする。
・電気水道代を無料にする。
・公営住宅を低収入層には無料で貸し出しする。
などです。
ただ、この方法は、住宅を確保し、餓死しない程度には生活出来ますが、仕事がなく収入の道がない人にとっては、ただ生きているだけの生活になります。
何百万人、いや何千万人もの人が、ただ生きているだけの生活に耐えられるのか
多少は娯楽も欲しいでしょうし、美味しい物も食べたい
となると犯罪が多発したり、社会不安が増大したりすることになり、この施策だけで将来のAI社会を安定させ乗りきることは困難です。
また、人々の購買力が全然ないのでは、企業などもAIやロボットを使って生産、提供した商品やサービスを販売して収益を得ることも困難です。
生活保護の充実
失業して収入のない人を片っ端から、生活保護するという方法もあります。
多くの人がAIの発達により職を失い、収入が激減したことに対して、広く生活保護をする事で、社会を維持していこうとするものですが
生活保護の最大の問題は、低所得者層の不公平感や労働意欲の低下です。
現在でも、生活保護の額よりわずかに所得の多い人、あるいは生活保護より所得は少ないもののかろうじて、生活保護には頼らないで生きている人も多いです。
それが、AIにより、さらに多くの人が職を失い、収入が減少している状況で、多数の人が生活保護に頼るような状態になったときに
・生活保護への抵抗感が薄れる
・頑張って仕事をするよりも生活保護を受けた方が楽(労働意欲の低下)
という問題が発生します。
そもそも10~20年以内には、世の中の仕事の半分は無くなるのですから
国民の半分は失業するか、あるいは生活保護に近い所得しか得られないことが予想されますから
国民の過半に近い人が生活保護を受ける状況になり
さらにAIの発達によって、職を失う人は右肩上がりで増えていきます。
となると、生活保護でAI後の世界をカバーしていくのは困難になります。
BI:ベーシックインカム制度の導入
国民の過半が仕事を失う、あるいは生活が出来るギリギリの収入しか得られなくなる状況になるのであれば、やはり、国民全員に一律、最低限の生活が出来るだけのお金を配るBI:ベーシックインカム制度がもっとも妥当な制度になるのでは無いかと考えます。
仮に、国民1人あたり8万円程度を毎月配布すれば
一人暮らしの人だと東京あたりではちょっと厳しいかも知れませんが、地方に行けばそれだけで生きていくことは何とか可能になるでしょう。
夫婦子供2人の4人家族であれば月32万円の収入ですから、贅沢を言わなければそれなりに生活していけます。
取り敢えず生活出来る最低限の収入がある上に
さらに働けばなにがしの収入を得て、娯楽に使ったり美味しい物を食べたり、欲しいものを購入したりできるわけですから、仕事を続けるという気持ちは多くの人が持ち続けるでしょう。
もちろん中には、面倒くさいし、きつい仕事はしたくない、取り敢えず生活出来れば良いという人もいるでしょうし
子供を5人くらい作れば、夫婦と合わせて7人家族、毎月7人×8万円=56万円の収入を得て、仕事をしなくても生活出来ると考える人もでてくるでしょう。
それでも、生活保護制度よりは、人々の勤労意欲は保ちやすい制度だと思います。
ベーシックインカムかかる費用や持続可能性は
ベーシックインカム制度、AI時代には最適の制度のように感じますが、ベーシックインカムにはどれほどの予算がかかるのでしょうか
それに国民全員にお金を配っていて、社会は持続可能なのでしょうか
ちなみに、日本の人口は2020年現在、約1億2600万人です。
この国民全員に毎月8万円ずつ配るとすると
12600万人×8万円×12回=年間約120兆円のお金が必要になります。
日本の国家予算は毎年、借金の返済も含め約100兆円
税収は約60兆円(足りない40兆円は新規国債=借金)です。
それなのにさらに120兆円ものお金を新規に支出するのは、とてもじゃないけど不可能に思えます。
持続可能性どころか来年1年間だけやるのも無理じゃないでしょうか。
そうは言っても10年後にはAIの普及による大量失業時代が迫っていますから
今のうちから準備しておかないと、社会は崩壊してしまう可能性があります。
コンピューターが発達しても人は失業せず新たな仕事が生まれてきたじゃないかと楽観視している人もいますが
初期の段階(今まで)のコンピューターの発達とは比べものにならないほど、AIの発達によって人間でなければ出来ない仕事は減っていきます。
楽観視していて、その先に地獄や崖が迫ってきてから慌てても遅いでしょう。
ではどうやって、BI:ベーシックインカム制度を運営していけば良いのか、その方策や可能性について考えていきたいと思います。
次回:ベーシックインカム制度導入の方法や可能性(記述中)
まとめ
AIの発達により、10~20年後には現在存在する仕事の少なくとも半分はAIによって取って代わられる可能性が高くなっています。
2045年にはシンギュラリティーにより人間よりAIの方が賢くなるという話はさておいても
AIによって仕事が無くなり、多くの人が収入を経たれたときに備えてBI:ベーシックインカム制度を今のうちから準備しておく必要があります。
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