車の自動運転が、視野に入ってきて近い将来にも実用化されそうな報道もなされています。
日本でも2020年の4月から道路運送車両法と道路交通法の自動運転に関する規定が、施行され自動運転レベル3での公道走行が可能になりました。
といっても、レベル3だとどういう事が可能になるのか、レベル0やレベル5だとどういう状態になるのか、自動運転のレベルについて取りまとめて解説します。
自動運転のレベルの定義
まずは簡単に、自動運転の各レベルにおいてどういう事になるのかを簡単にまとめました。
レベル 0(運転自動化なし)
:ドライバーがハンドルやアクセル/ブレーキなどすべての運転操作を行う
レベル 1(運転支援)
:ハンドル、アクセル/ブレーキ操作のいずれかをアシスト
レベル 2(部分的運転自動化)
:ハンドルと加減速の制御を車両システムがアシスト
レベル 3(条件付運転自動化)
:限定エリアですべての運転制御を車両システムが行う。ただし、緊急時など不測の事態でドライバーが対応(レベル3以上がいわゆる自動運転になります)
レベル 4(高度運転自動化)
:限定エリアで運転制御を車両システムが行う。ドライバーは不要
レベル 5(完全運転自動化)
:すべてのエリアで運転制御を車両システムが行う。ドライバーは不要
参考(JASO:公益社団法人自動車技術会)
JASOテクニカルペーパ 「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」
ダウンロードには簡単なアンケートに回答します(定義はPDF内19p~)
自動運転レベル0とは
自動運転レベル0とは文字通りゼロ、車は何もしてくれません。運転手が全ての運転操作を行う状態です。
自動運転レベル1とは
レベル1でも、車を運転するのはあくまでドライバー(運転手)、人になります。
自動運転の状況としては「運転を支援してくれる」レベルで「アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかが、部分的に自動化された状態」です。
もう少し具体的に言うと
・障害物を察知して自動で止まる(自動ブレーキ)
・前の車について走る
ACC:Adaptive Cruise Control
車間距離を一定に保ちつつ、定速走行を車が自動でやってくれる装置です。
・車線からはみ出さない
ホンダLKAS: Lane Keep Assist System、トヨタLKA: Lane Keeping Assist、日産:Lane Keeping Support Systemなど
車の前に設置したカメラ画像を基に車線を認識し、高速道路などを走行時、車両が車線の中央付近からずれようとすると、ハンドルに操舵力を加えることで車線維持をアシストします。また、車両が車線から逸脱する恐れがある時に警告ブザーや表示でドライバーに知らせる機能も備えています。
自動運転レベル2とは
レベル2になると、車線のキープや前の車に追従して走行する機能などを組み合わせることで、特定の条件下での自動運転が可能になります。
自動運転といっても、運転の主体はあくまで人で、車線のキープや、前車に追従して走行する機能はあくまでシステムが人を補助するレベルです。
自動運転レベル3とは
特定の条件下(高速道路など)での自動運転が可能になります。
このレベルになると、遅い車を追い越したり、高速道路での合流、分流も自動的に行えるようになります。
極端な話、運転手は運転席でいつでもハンドルやブレーキを操作できる状態であれば、ボーッと外を眺めていてもOKという状態になります。
日本では、2020年4月に「改正道路交通法」と「改正道路運送車両法」が施行され、法律上「自動運行装置」が正式に定義されたことで、レベル3の走行が可能となっています。
自動運転システム作動時、ドライバーは車両周辺の監視を行なくてもよくなります。ただし、システムから運転の要請があった際はただちに運転操作に戻れることが条件となっています。
また、あまりにもボーッとし過ぎて警報音などが鳴っているのに運転手が反応しない場合、車両を安全に停止させるミニマム・リスク・マヌーバー機能の搭載が義務づけられています。
要はスマホを見ながら運転していてもいいということになります。つまり、レベル2に対してレベル3の自動運転が最も違うのは、特定の条件下でシステムの監視義務が不要になり車の「運転主体」が人間からシステムに移ることになります。
もっとも作動の条件としては現在のところ、高速道路やそこに通じる自動車専用道路であり、天候の悪化がなく、道路上が渋滞やそれに近い混雑状況であることも条件に含まれ、同一車線内で最高速度を60km/hとする低速走行(渋滞時など)となっています。
自動運転レベル4とは
特定の条件下(一定の区域や自動車専用道路などの走行する場所や走行速度、天候などの環境など)で基本的に車が完全に自動運転を行ってくれます。
レベル4になると、レベル3とは違って緊急時にも運転手が対応せず、全てシステム側が自動運転の主体として責任を持つことになります。
自動運転システムが機能する条件を「ODD(Operational Design Domain/運行設計領域)」といい、自動運転レベル4でもODDを外れた際は車両が安全に自動停止するか、ドライバーによる手動運転に切り替えることになります。
ここで、レベル4の定義は「限定領域内」での自動運転とされているため、領域外で走行する場合に備えハンドルやアクセルを搭載したタイプと、領域内のみを走行するように特化したタイプの2種類が考えられます。
領域外でも走行可能なタイプはハンドルやアクセルなどを装備した、現行の車と同じ様な形をした手動運転も可能な汎用性の高いタイプとなり、現在の車の延長線上に存在しますが、より高度な技術とコストがかかることが想定されます。
一方、手動による操縦装置をなくしてしまうタイプは、あらかじめ定まった経路を走行するバスや空港内など特定のエリア内で走行する送迎車、タクシーなどをイメージしてもらうと良いと思います。
そして、こちらのタイプの方が商用性もあることから、当面はレベル4の中心はバスやタクシーといった移動サービスに向けられる可能性が高いかもしれません。
自動運転レベル5とは
レベル5になると完全に車が自動的に運転を行ってくれ、走行エリアに制限がなく、現在の車と変わらず、どこでも走行できるようになります。
レベル4とレベル5の差は、完全無人での走行が一定のエリアに限られるかそうでないかの違いになります。
運転はすべてシステムが担当し、ドライバーが不要になるだけではなく、ハンドルやアクセル、ブレーキなど運転席を設置する必要がなく、車内のデザインも、現在の車とはずいぶん違った作りになるでしょう。
車内にいる間も、現在と異なりテレビを観たり、話をしたり、あるいは気になるのはお酒を飲みながらなんてことも可能になるのでしょうか。
まとめ
自動運転レベル3が、限定的ではあるもの2020年から解禁されましたから、今後続々とレベル3走行が可能な自動車が発売されてくるでしょう。
また走行条件も広がり、2025年頃には高速道路での自動運転レベル4が実用化され、2030年頃には、高速道路でのレベル5が実現される可能性があります。
近年は高齢者の誤操作などによる交通事故が多発していて、高齢者の運転免許返納なども話題になっています。今後自動運転が普及すれば、高齢になっても車を運転・・・しなくても自動運転であちこちに出掛けられる世の中になっていくのかもしれませんね。
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